太陽光発電の3大トラブル「雨漏り」「台風」「反射光」
被害の大きさや特殊性からニュース等で見聞きする3大トラブルですが、実際のトラブル件数としてはむしろ発電不足や強引な契約でトラブルになる方が断然多いです。
とはいえ、全く起きないわけではないですし、一旦トラブルになると対処に時間と労力が非常に必要になることも事実。
こちらではトラブルに対処する方法ではなく、トラブルになる原因と未然に防ぐ方法についてご説明します。
太陽光発電のトラブル:不安トップは【雨漏り】
大切な屋根に穴を開けることから、不安に思う方も多いですが、雨漏りに関しては、防水処理をきちんと施しておけばまず心配はありません。
元々屋根に穴は開いている!
屋根の構造は、下から順に
1)垂木
2)コンパネ(野地板)
3)防止シート
4)屋根材(瓦やスレート)
となっています。
屋根材は釘などで野地板と垂木に固定されています。当然、間にある防水シートに穴が開きます。
つまり、元々屋根には穴が開いているといえます。それでも太陽光パネルを設置する前に雨漏りの心配をする方が少ないのは、屋根の専門家が確実な技術で防水処理を施しているからです。
また、瓦屋根とスレート屋根では少し構造が違います。
瓦屋根の場合、防水シートと瓦の間に瓦桟木と呼ばれる棒状の板を平行に並べ、瓦の裏にあるツメを引っ掛け、更に釘で固定します。
写真の赤丸が釘の固定部分、青丸が引っ掛けている部分です。
屋根材がスレートの場合は防水シートの上から釘やビスで固定します。
瓦屋根とスレート屋根では雨漏りの原因が違う
瓦屋根に太陽光パネルを設置する場合、いくつか工法がありますが、いずれも一旦瓦を取り外し、その後取り外した瓦を加工(穴を開ける・削る)するか、支持瓦と呼ばれる瓦型の金具と交換します。
雨漏りが発生する最大の原因は、この瓦を取り外した後、しっかりと元に戻せずガタツキや隙間ができてしまうことです。
瓦屋根に太陽光パネルを設置して雨漏りが発生する原因は業者の技術不足の可能性が高いです。
瓦と違い、スレートは取り外しが出来ません。
太陽光パネルを取り付けるには、スレートに架台を取り付け、架台にパネルを固定します。架台の固定にはまず下穴を開け、その後ネジや釘を使用します。
シャープHPより抜粋
問題は穴をどのように防水処理をするかです。もちろんメーカー基準では非常に厳しく決められていますので、決められたとおりに施工すれば雨漏りの心配はありません。
後は、業者のモラルの問題です。
ソーラーフロンティアHPより抜粋
- 必要な工程を省く
- 安い部材を使う(耐久性が低い)
- 雑な作業
このような意識の低さが原因で雨漏りを引き起こします。
被害の大きさは最大級:台風
日本は台風大国ですので年に数回は上陸しますし、近年では竜巻などが発生するケースもあり、実際に被害も出ています。
上記の画像は地上設置された太陽光発電が台風による強風で架台ごとバラバラになってしまっています。
一般家庭では屋根上に取り付けられることがほとんどで、仮に被害を受けてしまうと家や屋根はもちろん、場合によっては近隣にまで被害が出るかもしれません。
瞬間最大風速60m/sに耐えられるよう法律で決まっている
そもそも、屋根に取り付ける以上風に対する対策は取らなければなりません。
屋根に取り付ける太陽光発電は、建築基準法で瞬間最大風速60m/s(地上13m)に耐えられるように設計することが定められています。(屋根瓦が飛ばされるおそれがあるのは風速25m/s)
ちなみに、気象庁による風と台風の威力についてです。
- 風速30m/s以上または最大瞬間風速が50m/s以上の風・・・「猛烈な風」
- 台風の強さで最大級の「猛烈な台風」・・・風速54m/s以上
- 風速60m/sとは・・・「鉄塔が曲がることがある」レベルの強さ
風速60m/sに耐えられる様に設置されていれば、まず風で飛ばされる心配は無いことがわかります。万が一被害が出てしまった場合は業者が法律を守っていなかった可能性が出てきます。
トラブル回避のための保険加入
太陽光発電のメーカーでは、10年以上のメーカー保証が用意されています。京セラは無償で台風被害も保証対象ですが、その他のメーカーでは自然災害は有償保証がほとんどです。
ただしこの有償の自然災害補償は設置者(ユーザー)が直接メーカーと契約することは出来ません。
京セラ以外のメーカーの自然災害補償は、販売設置業者とメーカーとの間で成立する保険で、任意加入となっています。トラブル回避の大前提として、自然災害補償に加入している業者を選びましょう。
肝心の補償の中身ですが、どのメーカーも大差はありません。
- @火災
- A落雷
- B破損・爆発
- C風災(台風・暴風雨・豪雨など)
- Dひょう災
- E雪災(豪雪・雪崩など)
- F水災(台風・暴風雨・豪雨等による洪水・高潮・土砂崩れなど)
- G建物外部からの物体の飛来・落下・衝突または倒壊
台風で心配されるトラブルはC・F・Gが当てはまります。上限200万円〜300万円程度の保険金が支払われます。
ただし、近隣への損害はたとえ台風が原因でも補償されません。あくまで補償対象は「太陽光発電システム」のみとなっています。
自然災害は避けようがありませんが、トラブルになってしまうケースとしては
- @業者が法律を遵守した施工を行っていない
- A自然災害補償に未加入
以上の2点が考えられます。
特に@の場合、台風トラブルだけではなく雨漏りや発電不良、手抜き工事も心配されます。モラルの高い業者を選ぶことがここでも非常に重要になります。
増えているトラブル:反射光
雨漏りは自宅だけの問題ですが、反射は相手あっての問題であり、裁判までもつれた挙句に太陽光パネルを取り外すことになった事例もありました。(その後高裁で一審判決は覆り、受忍限度は超えていないと判決が出ました)
野立て(地面に架台を設置して太陽光パネルを並べる)場合は事前の準備や確認不足等様々な原因が考えられますが、一般家庭に取り付ける場合の反射光問題は至ってシンプル。原因は設置角度と設置方位のみです。
小学校の時に習った反射の法則を思い出して下さい。光は入射角(差し込む角度)と同じ角度で反射します。そうなると、そもそも屋根上に設置した場合、相手家屋の室内にまで入り込むにはかなり下方に反射する事になります。
例外として、隣家がマンション等の集合住宅で、窓が自宅よりかなり上方にある場合も考えられますが、そのようなケースは稀であると言えるでしょう。
太陽光が差し込む角度(高度)は年間でかなり変わり、東京では冬至で31°、夏至で78°と45°以上の差がありますが、南側の屋根に太陽光パネルを設置していれば、いずれも上空に反射します。
図は屋根の角度が急(6寸勾配で約30°)なケースです。一般家庭は通常3〜6寸勾配で、3寸勾配になればさらに上空に向かいます。(屋根の角度が緩やかなため)
南面への設置であれば、隣家の窓がよほど高い位置になければ反射光は当たりません。
東西面の設置は注意。北面は設置不可が多い
問題は、東西面と北面です。
北面はそもそも設置不可のメーカーが多く、設置したとしても発電量も少ないですしメーカー保証も効かないので、お勧めしません。強引に設置を勧める様な業者は信用しないほうが無難です。
仮に設置したとすると、反射トラブルが起こる可能性は高くなります。
東西面は南面よりも発電量は落ちる(南面に対して85%程度の発電)ものの、充分発電しますし、パネル枚数が増やせる・発電時間が長くなる等もメリットがあります。
ただし、太陽の位置や高度、屋根の角度や隣家の位置によっては隣家に反射光が届いてしまいます。
東西設置はメリットがあるものの、条件によっては反射光トラブルになる可能性が0ではありません。トラブルを避けるためには、反射光の懸念がある場合は手鏡等で事前に反射光の向きを確認する必要があります。
これは、知識のある業者であれば必ず対応してくれますし、施主が気が付かなくてもアドバイスしてくれるはずです。
何の根拠もなく「大丈夫」というような業者は要注意です。
トラブルを避ける最も効果的な方法
太陽光発電に多い3大トラブルである台風・雨漏り・反射光ですが、この3つを避けることは意外と簡単です。
それは信頼できる業者に依頼すること。
雨漏りと台風・・・確実な技術とモラルで回避可能
反射光・・・知識のある業者が事前調査を行えば心配なし
太陽光発電で満足できるか否かは、90%以上業者で決まると言っても過言ではありません。
トラブルを避けるためにも、複数の業者を比較して納得のいく業者を選ぶことが必要になります。