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今後の売電はどうなる?売電価格の推移と歴史

2009年11月に始まった余剰電力買取制度(現在の固定価格買い取り制度)。当初は1kwあたり48円と高額に設定されていましたが、その後はご存知の通り売電価格は下落の一途をたどり、2025年には1kwあたり10.3円が目標とされています。

 

そもそも、売電価格が高額に設定されていた背景には、設置費用が今とは比較にならないほど高額だったからという理由がありましたが、やはり売電収入が減るのはもったいないと感じることでしょう。

 

売電価格が2円下がった場合の具体的な差額や、現在の売電価格、ひいては10.3円まで下がってもメリットを出すための条件などをまとめました。

売電価格の推移

2022年までの売電価格の推移

 

2010年から2023年までの売電価格推移

年度

売電価格(10年間)

(1kwあたり)

全量買取(20年間)

2010(平成22)年

※2009年11月より実施

48円

2011(平成23)年

42円

2012(平成24)年

42円

40円+税

2013(平成25)年

38円

36円+税

2014(平成26)年

37円

32円+税

2015(平成27)年

35円〜33円

29円〜27円+税

2016(平成28)年

33円〜31円

24円+税

2017(平成29)年

30円〜28円

21円+税

2018(平成30)年
(平成31年3月末)

28円〜26円

18円+税

2019(平成31)年

(平成31年4月〜翌令和2年3月末)

26円〜24円

14円+税

2020(令和2)年

(令和2年4月〜令和3年3月末)

21円

(50kw未満は全量買取不可に変更)

10kw〜50kw未満 13円+税

50kw〜250kw未満 12円+税

2021(令和3)年

(令和3年4月〜令和4年3月末)

19円

10kw〜50kw未満 12円+税

50kw〜250kw未満 11円+税

2022(令和4)年

(令和4年4月〜令和5年3月末)

17円

10kw〜50kw未満 11円+税

50kw〜250kw未満 10円+税

2023(令和5)年

(令和5年4月〜令和6年3月末)

16円

10kw〜50kw未満 10円+税

50kw〜入札対象未満 9.5円+税

2024(令和6)年

(令和6年4月〜令和7年3月末)

16円

10kw以上の屋根設置 12円

10kw以上50kw未満の地上設置 10円

150kw以上の地上設置(入札対象外) 9.2円

毎年、確実に下がっていることがわかると思います。

 

しかし、売電価格を決定するうえで設置者の「調達期間(売電期間)中の経済合理的な選択」、つまり売電するか、自家消費をするかの意識を変える可能性も考慮したうえで、売電価格が検討されていますので、設置費用や光熱費削減効果を鑑みれば、そこまで大きな影響はないと思われます。

売電の歴史

実は2009年11月以前も売電は可能でした。ただし、国が率先して推進していたわけではなく、あくまで電力会社の自主買取となっていました。

 

そのため、売電価格は買電と同程度の約24円。これではほとんどメリットがないため、売電を起爆剤とした太陽光発電の普及は全くなされませんでした。

 

ちなみに、固定価格買取制度が始まるまで(2012年7月)までは全量買取という概念がなかったため、産業用は1kwあたり約24円のままでした。

 

ではなぜ、急に売電価格が値上げされたのか?一説には京都議定書の存在が挙げられています。京都議定書とは温室効果ガスの削減目標を掲げた国際条約のこと。この中で日本は2008年から2012年の間に6%の削減(1990年比)を約束しました。

 

この目標達成のため、石油等の化石燃料の使用削減を目的として、太陽光発電の普及を推し進めたといえるでしょう。

 

売電と補助金の2大柱で太陽光発電を推進

2009年11月から高額での売電を可能とした余剰電力買い取り制度を、さらに2010年からは補助金を開始し、国を挙げての太陽光発電推進が始まりました。

 

補助金で設置費用を抑え、売電で元を取る。

 

この政策は大当たりし、太陽光発電は確実に普及していきました。高額な売電単価を目当てに、経済的メリットを求めて太陽光発電を導入する人が増えたからです。

 

結果として、(太陽光発電の効果だけではありませんが)6%削減を達成。更に普及によって太陽光発電の設置費用も徐々に下がり、設置のハードルも低くなっていきました。

 

2011年3月11日 東日本大震災

太陽光発電が普及したきっかけとして、忘れてはいけないのが東日本大震災です。

 

甚大な被害をもたらしたこの震災は、原発依存への疑問も呈しました。また、計画停電が実施されたことで「電気の自給自足」への関心も高めました。

 

当時の売電価格は1kwあたり42円と高額のうえ補助金もあったので、経済メリットに加え災害への備えとして太陽光発電が注目を集め、一気に普及が進みます。

 

国民負担の増加

2012年7月に余剰電力買い取り制度から固定価格買取制度へ移行し、10kw以上では発電した全てを売電できることになりました。余剰売電よりも大きな経済メリットがあるとして、全国各地で大規模太陽光発電所が計画、開発されました。

 

それに伴い売電に必要な資金も増大し、電気使用者から徴収している賦課金の額も上がっていきました。(賦課金についてはこちらを参照)

 

国民の不満が溜まっている状態では、これ以上の太陽光発電の普及は望めません。固定価格買取制度はより現状に則した制度になるよう、少しづつ改正されていきます。

 

売電から自家消費へ

売電はあくまで普及のための起爆剤。最終目標は高額な売電なしでも継続して普及していくことです。

 

徐々に売電価格を下げ、売電から自家消費へ移行する。大規模太陽光発電所は入札により売電価格を決める。売電価格の決定時期を改めるなど、様々な対策が取られました。

 

最終目標は2025年に卸市場と同程度の1kwあたり10.3円。売るよりも使ったほうが断然得です。多少の誤差はあるかもしれませんが、後数年で家庭用はこの価格まで引き下げられる予定です。

 

また2022年度は、1,000kw以上の太陽光発電所は新たに始まる「FIP制度」の対象となりました。

 

これは固定価格買取制度から自立し、電力市場に統合させることを意味します。よって、賦課金の対象にもなりません。

 

売電ばかりに頼っていては、太陽光発電のこれ以上の普及は難しくなります。今後は売電よりも自家消費がメインとなっていくでしょう。

今後の売電価格と引き下げの影響について

年々引き下げが続いている売電価格ですが、今後も下がっていくことが決定しています。

 

売電価格が下がるということは、当然ですが売電収入が減るということです。仮に2円引き下げられた場合、影響はどれ位あるのでしょうか。

 

売電の固定期間は10年間ですので、10年間でどれ位差が出るのか政府発表の資料から計算してみたいと思います。

 

計算条件

 

  • 設備利用率・・・13.4%
    設備利用率とは、太陽光発電システムが年間どれ位発電出来るか(設備として利用されているか)を示す数値です。

    この数値を基に計算すると、太陽光発電1kwあたりの年間発電量は
    24時間×365日×13.4%=1,173.84kwとなります。
  •  

  • 余剰売電比率・・・70.1%
    余剰売電比率とは、自己消費後の余った電力をどれ位売電に回せるか(余剰売電)の割合です。

    設置kw数や生活環境等に大きく左右されますが、平均で70.1%とされています。

 

1kwあたりでは10年間でどれ位減るか

 

まず、1kwあたりどれ位売電額が減ってしまうか確認してみましょう。

 

1kwの太陽光発電は、年間1,173.84kwの発電量です。

 

この内70.1%が売電に回せるので

1,173.84kw×70.1%×10年間
8,228.6184kw

 

2円引き下げなので

8,228.6184kw×2円
16,457.236円

 

1kwあたり、10年間で約16,460円減ってしまう計算になります。

 

一般家庭ではどれ位影響がある?

それぞれの設置kw毎の10年間の売電差額を確認してみます。

3kw設置 16,460円×3kw=49,380円
4kw設置 16,460円×4kw=65,840円
5kw設置 16,460円×5kw=82,300円
6kw設置 16,460円×6kw=98,760円

設置kwが大きくなればなるほど、差額も大きくなることがわかります。

 

しかも上記はあくまで平均で、一般的には設置kwが増えれば増えるほど、売電に回せる割合も上がっていきます。

 

そのため、6kw設置では表より差額が大きくなることも充分に考えられます。

太陽光発電でメリットを出すために必要な2つのこと

下がった売電価格でメリットを出すには光熱費削減効果を見る

売電価格は16円。対して、買電単価は契約している電力会社やプランによってマチマチですが、ほとんどのケースでは買電のほうが高額な単価になっているでしょう。

 

例として、東京電力のスマートライフ(オール電化向け)プランでは昼間(朝6:00〜翌深夜1:00)1kwあたり35.96円、それ以外の時間帯(深夜1:00〜朝6:00)までが28.06円となっています。

 

昼間・深夜時間帯共に売電価格のほうが高額です。さらに一番電気を使うであろう昼間のほうが高く、真夏の日中にエアコンを使っていたらとんでもなく高くなってしまった…なんてこともあり得ます。

 

昼間の時間帯は、太陽光発電の発電量が期待できる時間帯でもあるので、光熱費削減効果は絶大です。

 

小さなお子さんやご年配の方、室内でペットを飼っておられる等、エアコンを使わない選択肢が難しい方は、太陽光発電を設置するメリットが非常に大きくなります。

 

それ以外のご家庭でも、殆どの電力会社では300kwを超えて使用した電気単価は1kwあたり30円以上がすることが多く、売電価格よりも割高です。

 

太陽光発電を自己消費することで買電量を抑え、割高な電気料金を避けることができます。

 

下がった売電価格でメリットを出すには設置費用を抑える

買電と売電のバランスを上手くとっても、設置費用が高ければメリットは出にくくなります。

 

現在の太陽光発電の相場は1kwあたり20万円台半ばくらいですが、地域やメーカーによっても差があります。

 

リアルタイムの最新相場はこちらで確認できます

 

売電価格を決定する際の参考設置費用は1kw当たり25.9万円。この価格で設置できれば充分にメリットの出る売電価格となっています。

 

設置費用についてはこちらも参考にしてください

 

1kwあたり25万円前後で設置できれば、よほどの事がない限りメリットがあるでしょう。

 

ちなみに、一括見積もりサイトなどを利用して相見積もりを取ることで1kwあたり20万円前半も十分可能になっています。

一括見積もりサイトの比較一覧はこちら

売電価格は2025年に10.3円まで引き下げることが目標

 

一般家庭が対象となる余剰売電(10kw未満の太陽光発電)では、2025年度の売電価格を「1kwあたり10.3円(卸電力市場価格並み)」を目標としています。

 

家庭用太陽光発電の今後の売電価格の予想

 

ここまで引き下げる背景として、@国民負担の軽減、A欧州よりも高額な設置費用、B自己消費への移行の3点が挙げられます。

 

売電価格を下げる理由は国民負担の軽減

太陽光発電の売電にかかる費用(買取費用)は、電気利用者から広く徴収されています。

 

殆どの家庭で電気を利用していますので、国民全体で費用を負担していることになります。

 

太陽光発電の急速な普及で、この「徴収額」が予想よりも高額になってしまい、売電価格を引き下げざるを得なくなりました。

 

売電価格を下げる理由は設置費用の引き下げ

欧州と日本の太陽光発電設置費用の比較

(調達価格等算定委員会配布資料より抜粋)

 

上記の表は、売電価格決定の際の審議会に配布された資料から抜粋しました。

 

日本よりひと足早くFIT(固定価格買取制度)を開始したイタリアやドイツでは、FIT導入直後から急激に設置費用が下がっています。

 

日本はまだドイツやイタリアほど下がっていないため、「もっと引き下げられるはず」という理由で売電価格を引き下げ、企業努力を促す方針へと変換しました。

設置費用についてはこちらで詳しく解説しています。

 

売電価格の引き下げは自己消費への移行のため

国民負担の軽減にも通じるのですが、やはりいつまでも高額の売電価格を設定していては、国民の負担が増えるばかり。

 

太陽光発電を普及させつつ、国民負担を抑えるには、自己消費のメリットを大きくしなければなりません。

 

そのために、まずは設置費用の目標額を定め、売電価格とともに設置費用も下がっていくよう、微妙なかじ取りをしつつ、20年でコスト回収ができるような売電価格の設定となっています。

設置費用の目標価格(1kwあたり)

種類 2020年(1kwあたり) 2025年(1kwあたり)
家庭用太陽光発電 30万円 20万円
事業用太陽光発電(10kw以上) 20万円 10万円

 

売電価格は下がったのに設置費用が高額なままでは、太陽光発電の導入に踏み切る家庭が減ってしまいます。

 

今後はメーカー・販売設置業者は設置費用が少しでも下げられるようパネルの生産過程や設置工法の工夫をより一層迫られることとなります。

 

とはいえ、政府の目標通りに設置費用が下がる保証もありません。設置費用が目標ほど低下せず、売電価格の引き下げだけが先行してしまう可能性も否定できません。太陽光発電の導入を検討している方は、とりあえず見積りだけでも先にとっておくことをおすすめします。

設置費用についてはこちら

産業用は1kwあたり7円が目標

産業用太陽光発電の売電について

産業用(10kw以上設置の全量売電)は、更に厳しくなっています。

全量売電では、固定価格買取制度開始直後の高い売電価格(1kwあたり税抜40円)をキープしたまま、未だ発電を開始していない案件もあります。

少しでも設置費用が安くなってから発電を開始する予定なのかもしれませんが、不公平感があり、早急に対処が必要となっています。

発電予定が不明の案件については、認定取り消しも進んでいますが、制度開始後に増えた再生可能エネルギーの殆どを産業用太陽光発電が占めていますので、更なる引き下げが検討されています。



産業用は欧州と比較して約2倍の設置費用

欧州と日本の太陽光発電設置費用の比較(産業用)

家庭用(10kw未満)の太陽光発電の設置費用も欧州と比べ高額ですが、産業用では更に差があり、約2倍もの開きがあります。このため、売電価格の引き下げや入札方式の導入で設置費用の引き下げを推し進める方針です。

 

更には、固定価格買取制度に頼らず自立した電源として活用できるよう、1,000kw以上の太陽光発電にはFIP(フィード・イン・プレミアム)方式を採用しています。FIPの対象を徐々に拡大していくことで、買取負担の軽減や、太陽光発電を一時的なブームにせず、持続可能なエネルギーにしていく予定です。

 

※FIPとは・・・
電力卸市場に+α(プレミアム分の上乗せ)の単価で買取する制度。買取価格が固定ではなく卸市場と連動するため市場競争を促し、買取費用の低減も見込めます。

最終目標は自己消費

売電価格と設置費用、両方の引き下げを目標にしているのは、最終的には自己消費へとの思いがあります。

 

現在、太陽光発電を導入する方の殆どは、売電の後押しがあってこそではないでしょうか。しかし、高い売電価格は継続が難しいのが現実です。

 

設置費用が安くなれば、自己消費の節電分で充分に経済メリットが出るようになります。

 

太陽光発電が継続して普及していくためには、やはり設置費用の低価格化が必須課題となるでしょう。

売電の今後:まとめ

 

売電価格の引き下げが続くことは確実で、目標は2025年に1kwあたり10.3円
設置費用の低減を促すような売電価格を設定していく
売電に頼らず、自己消費でもメリットが出るようにすることが最終目標

 

先に太陽光発電の普及が進んでいった欧州等の海外と比較すると、約2倍も高い日本の太陽光発電。今後は売電価格だけではなく、設置費用の下がり幅にも注視していく必要があります。

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